日記

「ベトナムの赤ひげ先生」服部先生の元へ ボランティア研修体験記

2023年4月21日

医学部専門予備校YMSが長年に渡り応援している眼科医服部匡志先生は、ベトナムで医療貢献をされています。この度、服部先生のところにYMS卒業生で東京女子医科大学の学生佐藤さん・荒牧さんが、ボランティア研修に参加しました。以下は今回ボランティア研修に参加された2名からの体験談です。

 


はじめに

「ベトナムで医療支援を行う。」このように聞いた時、私たち日本人はどのような光景を思い浮かべるだろうか。支援の行き届かない不衛生な現場を思うだろうか。あるいは、難民キャンプとでもいうような現場だろうか。

しかし、わたしたちの安易な想像とは裏腹に、ベトナムは非常に優秀な医師とスタッフ、そして、日本人医師の支援からなる専門の医療体制がなされていた。

 

服部先生とは

今回私たちは、長年ベトナムの医療支援を行っている服部先生のチームに同行させていただいた。

服部先生はベトナムで、理想の医師の代名詞である「赤ひげ先生」として知られており、2022年には長年のベトナムでの活動が評価され、マグサイサイ賞を受賞している。マグサイサイ賞とはアジアのノーベル賞とも呼ばれる権威ある賞であり、日本では緒方貞子さんや中村哲先生が受賞している。

私たちは服部先生にお会いするにあたって、服部先生に関する様々な記事やインタビューを拝見した。そのいずれからも自身を犠牲にしてでも患者さんに尽くす、服部先生の医師としての熱い想いを伺うことができた。

 

体験記

1日目

3/23 14:00頃ベトナムの首都ハノイにあるノイバイ空港に到着した。飛行機から降り、想像していた以上の暑さに仰天した。気温は37℃であった。

空港から移動して、夕方にはハノイ中心地にあるホテルに到着した。その後、ハノイ旧市街地〜ホアンキエム湖周辺を散策した。散策する中で見た、激しく行き交うバイク、街中に響くクラクションの音、道路脇の小さなプラスティックの椅子に座り談笑する人々といった日本では見られない光景に初めは戸惑ったが、ほどなくしてこれらが活気あるハノイの街を構成する要素になっていると感じた。

そして、これほど日本と風土や文化の異なる国で医師として人生を捧げ、慕われる服部先生とはどんな方なのだろうかという思いから早く服部先生にお会いしたいという気持ちが高まった。ホテルに帰った私たちは翌日からのボランティア活動への緊張と期待を語りながら就寝した。

 

2日目

共にボランティアを行なう高校生と合流し、ハノイ中心地から東に2時間ほどの距離にある病院へと移動した。移動するバスの中で、服部先生を含めた数人の医師で2日間に100人弱の白内障の手術を行うということを伺い、白内障の手術を見たことのない私たちもその過酷さは理解した。病院に着いた時、私たちは目を見合わせた。率直に言うと、ベトナムの都市部から離れた病院と聞いていた私たちは簡易的な建物を想定していた。しかし、そこにあったのは地上5階はある、歴とした病院だった。

病院に着くとまず初めに診察が行われた。病室一部屋につき10〜12人の患者さんがベッドに横たわっており、服部先生と日本人医師が症例の重さを振り分けていった。日本ではまず見られないほどに進行してしまった症例もあり、病院は想像していたよりも発展していても、やはり日本と比較すると経済的・人材的理由から地方にはまだ医療が行き届いていないということを実感した。

今回、私たちは未熟ながら日本からボランティアに参加している先生方が行う手術の器械の消毒や整頓といった手術の補助、器具や薬品を補充するなどの外回りのような仕事を経験させていただいた。間近で手術を見学させていただく中で、手術器具や薬品の、顕微鏡の精度等に日本との差があることを知り、服部先生の医療物資の支援も含む活動の意義を改めて感じた。休憩の際には軽食を食べながら服部先生とお話をさせていただいた。新聞記事やインタビューでは知ることのできなかった関西弁の話口調に、先生の活動や受賞歴からは想像していなかった親しみを感じた。そして、服部先生は自分の力不足に心苦しさを感じていた私たちに「初めはみんなそうや」と笑いながら言った。その一言に少し安心するとともにより頑張ろうと思った。

ベトナム人・日本人問わず多くの人が活動を支援し、付いていきたいと思うのは、その活動内容への賛同はもちろん、服部先生の人柄による求心力が大きいのではないかと感じた。

 

夜は服部先生、ベトナムのスタッフの方、日本のボランティアチームで会食をし、交流を深めた。そして、就寝前には1日の反省点や学んだことを共有して、明日も頑張ろうと気合を入れた。

 

3日目

前日共有したことを元に、また各々手術の補助と外回りを担当した。そして、少し要領を掴み始めた頃にベトナムのスタッフの方から呼ばれた。服部先生の手術の補助に入るようにということだった。服部先生の補助では、手術の進行に合わせて手術器具を出すことも必要とされた。そのため、私たちにそんな仕事は務まらないと思い臆していたが、こんな貴重な経験を逃しては後悔すると思い挑戦した。初めは服部先生に言われた手術器具が分からず器具を出すことに苦労した。それでも、服部先生は私たちを責めたりはしなかった。
ただ、その手術に対する真剣な眼差しを間近で見て、少しでも役に立ちたいと感じ、私たちも身が引き締まる思いで手術の補助にあたった。

医学部専門予備校YMS ベトナム医療ボランティア、服部匡志先生の手術の様子

ベトナムの病院にて手術を行う服部医師

 

医学部専門予備校YMS ベトナム医療ボランティア、服部匡志先生の手術の様子

服部医師の手術の補助を経験

 

最終日

服部先生、日本のボランティアの先生方、現地の医師によって前日までに手術を行った患者さんの感染症等の合併症を含めた経過観察が行われた。結果、全ての患者さんの経過が順調で、無事に今回のボランティアを終えることができた。

また、初めは言語の違いから壁を感じていた現地の医療スタッフとも、会食による交流のおかげか最終日には簡単な英語やジェスチャーでコミュニケーションができるほどに心の距離を縮めることができた。

 

今回服部先生に同行させていただいて、ボランティアというには与えるよりも与えられることが多く、様々なことを学ばせていただいた。ベトナムで患者さんだけでなくメディアにも注目されていても、ボランティア活動を鼻にかけることも無く、当然のように振る舞う服部先生を見て、純粋に患者さんを救いたいという情熱を感じ、医師のあるべき姿を学んだ。また、難症例等の大変な手術の状況下でも常に冷静で、私たちにも優しく接してくださる日本人の先生方を見て、私たちもそういう医師になりたいと感じた。

そして、服部先生と服部先生の想いを支援し慕う日本人の先生方の関係がとても素敵だと感じた。

 

最後に、今回の経験で私たちがいかに力不足か、学ぶべきことがあるかを痛感することができた。この気持ちを胸にこれからの大学生活でより多くのことを吸収していきたい。

 

追記

今回私たちのベトナムでのボランティアにあたり、素晴らしい機会をくださった服部先生・YMS七沢先生、サポートをしてくださったコーディネーターの方・通訳の方・現地スタッフの方、ベトナムでの時間を素敵なものにしてくださった先生方・大阪国際高校、大阪国際滝井高校の皆さん、本当にありがとうございました。

医学部専門予備校YMS ベトナム医療ボランティア、服部匡志先生
医学部専門予備校YMS ベトナム医療ボランティア、服部匡志先生

 


 

荒牧さん、佐藤さん、貴重なボランティア体験談ありがとうございました!

 

◆眼科医 服部匡志医師経歴

2022年8月31日、「アジアのノーベル賞」とも呼ばれるマグサイサイ賞を受賞。20年間以上にわたり、白内障手術や網膜硝子体手術など約2万件以上を手がけるほか、若手医師の育成に従事、その貢献が評価された。ベトナムで「赤ひげ先生」と呼ばれ20年間医療活動を続ける眼科医。

高校2年生の時、父親を胃がんで亡くしたことが医者を志す転機となった。4浪の末京都府立医科大進学、1留し1993年に卒業。卒業後、眼科の木下教授に出会い、眼科の道に進み日本各地の病院で経験を積む。

2001年10月、京都府立医科大学で開催された「臨床眼科学会」でベトナム人医師と出会い、患者の治療と眼科医の指導を懇願される。網膜硝子体手術の分野ではトップレベルの技術を手にし、多忙でありながら医師として不自由の無い日本での生活を捨て、ベトナムでの医療活動を始めたのは、2002年4月。
赴任先は、医療指導という立場でベトナム国立眼科病院へ。網膜剥離や糖尿病網膜症などの治療、指導を始める。今では、服部医師が育てた眼科医も増え、ベトナムの眼科医療はレベルアップしてきたが、活動を始めた当初は、医療スタッフの教育や意識改革は進んでいるものの、器材不足は否めず、自腹を切って器具を買い揃えるため定期的に日本へ帰国し、資金を工面する二重生活を続けた。戸惑いや失敗も多く挫折を繰り返しながらも、現地の医療事情に適合しつつ実績を重ね、信頼を得ていった。

今やその技術は世界トップレベルで誰もが認める凄腕。20年間の活動で、養成してきた医師の数は、網膜硝子体手術では20~30人、白内障手術では40~50人。手術数は2万件を超える。

ベトナムでの国際貢献が認められ、これまで数々の栄誉ある賞を受賞している服部医師。2022年8月には、アジアの平和や発展に尽くした個人や団体に贈られ“アジアのノーベル賞”とも呼ばれる「マグサイサイ賞」を受賞。父親からの遺言は「人の役に立つ生き方をしろ」。学生などへの講演活動の際には、必ず「助けを求めている人がいたら、遠慮なく助けなさい」と伝えていると言う。服部医師の活動は今もなお続く。

 

 


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